「はぁ...」



喜んでくれるかと思ったら、聞こえてきたのはそんなため息。



「そんなの朝の時点から、いや昨日の時点でわかってたから。とりあえず降りろアホ」



こつん、と頭を小突かれて、仕方なく組み敷いていたアイツこと幼なじみの瀬戸美月(せとみづき)の上から降りる。


ちぇ〜、ツキも一緒になって喜んでくれたっていいのに。
可愛げのないやつめ。



「ソラ」


「ん?」



呼ばれた名前に、ツキの方を見ると、立ち上がったツキは痛そうに腰をさすっていた。


むう、わたしがそんなに重かったって?


じと目で睨むと、またツキがため息をついた。



「入学式遅れるから、はやく着替えて」



ツキを見て気づいた。
ツキが着ているのは中学のときの学ランじゃなくて、ブレザーだ。



「やっぱり...」



ツキは学ランよりもブレザーの方が似合ってる。



「なに」



「早く着替えてこい」と言わんばかりに、こちらを睨んでくるツキを無視して、さっき降りたばかりの階段を再び駆け上がる。