「え、ほんとになんの匂い?」
頬づえをついて、ポテトを頬張るわたしの顔をツキが覗き込む。
そのとき微かに鼻についた甘い匂い。
こんなのツキの匂いじゃないもん。
「ソラ?」
「なんで訂正しなかったの」
「え?」
いつもは頭も切れて鋭いくせに、たまに鈍感なところが嫌になる。
そのこてっと首を傾げる仕草が周りの女の子から可愛いって言われてたこと知ってる?
故意的なのか意図的なのか知らないけどムカつく。
それに、わたしとお揃いの名前。
間違った読み方否定してほしかった。
「〝ミヅキ〟だもん……」
小さくこぼした声。
ツキは決して聞き逃すなんてことしなかった。