「え、なに、急に?」



女の子のかたまり、そう目の前の集団のそんなひそひそ話が聞こえた。

その瞬間、我に返る。


女の子たちに〝ミツキ〟と呼ばれていた彼も、驚いているのが集団の中にいてもわかる。


ってか、あんた名前間違って呼ばれてるんだから、訂正するなり、否定するなりしなさいよ!



なんでわたしが!

なんでわたしが……っ!



「うわああああ」



女の子たちの視線が痛くて、なんだかいたたまれなくて、逃げるように教室を出た。

しかも変な奇声付きで。


だって、ツキは助けてもくれないし。(当たり前だけど)
フォローのひとつくらいしてくれたっていいじゃん!



「お、美空!今からお前らの教室にって、うえっ!」



廊下ですれ違った同中の涼介(りょうすけ)の腕を捕まえて、なおも逃げるように廊下を走る。



「ちょっ、おい、美空っ!?」



そんな涼介の問いかけを無視して走り続けた。