「だからっ、その、ごめんなさいっ!」
「ふふっ」
健気に謝る彼がなんだか可愛くて、不謹慎だけど笑ってしまった。
案の定、彼は鳩が豆鉄砲でもくらったように、驚いた顔をしている。
「そんなの岸田くんが謝ることじゃないよ。
それを言うならわたしの方こそごめんね?
ぶつかったのは完全にわたしの不注意だったし」
「そんなことはっ!」
彼がそう反論しようとしたとき。
「高野さーん、岸田くーん?
お取り込み中申し訳ないんだけど、早く並んでくださーいっ」
教室のドア付近で笑顔の先生が大声でそう言った。
ううっ、先生そのいじりははやめてくださいってば。
目の前の彼はやっぱり真っ赤。
やっぱりつられてしまってわたしも真っ赤。
けれどすぐにおかしくなって吹き出した。
岸田くんはまた驚いている。
4月、桜の舞う新しい季節。
「行こっか」
「う、うん……」
おもしろい出会いをした。