「あの、えっと、大丈夫、ですか?」



彼のそんな一言と同時に、チャイムの最後の〝コーン〟が鳴り響く。


しまった……!!



「君!何組!?」


「えっ、あ、6組です」



わたしと同じ!


彼の細い腕を捕まえて、ぐいっと引っ張る。



「ん、えっ!?」


「急いで!初日から怒られるのは勘弁なの!」



って言っても、最後のチャイムの音を聞いた瞬間から、遅刻は確定なんだけど。


いかにも歩いてきましたって状態で教室に入るよりも、少しくらい息を切らして急いできましたって状態で教室に入る方が印象はいいでしょう?


走る動機は不純だけど、誰だって初日から悪い印象持たれたくないじゃん!




学校に遅れそうなとき、いつだって手を引いてくれてたのはツキだった。

けれど、今はわたしが名前も知らない初めましての相手の手を引いてる。


なんか、変なの。
今日はおかしなことばっかり。

離れてみてもやっぱりツキのことばっかり。


ふと、そんなことを思った。



廊下の一番端っこ。
1年6組のプレートが見えた。

どうやら、あとの7、8、9組は2階にあるらしい。