人によって味覚は違う。
 砂糖の甘さが好きな奴、唐辛子の辛みが好きな奴、ゴーヤの苦味が好きな奴、ツンとする山葵が嫌いな奴、生クリームが嫌いな奴……。

 そして何を蜜と感じるかも人それぞれだ。

 僕の場合はそれが復讐だった。
 あいつらは皆、それぞれで勝手に堕ちて行った。 僕はその為の、ほんの少しのきっかけを与えただけ。

 僕のした事を誰かが知れば、きっとこう言うだろう。

『復讐なんて実にならないことはやめておけ』
『そんな事をしても何にもならないぞ』
『間違った事はするな』

 それが一般的な常識論だろう。
 だが、それがどうした。 くだらない。
 僕にとっては正しくもなければ間違ってもいない。 それしか選択肢がなかったのだ。