「閣下。以前、もっとお互いに話をしようと仰いましたわね? 閣下は他の誰でもなく、わたくしを妻にしたいと仰って下さいましたわね?」
「ああ……、言った」 
「わたくしだって同じなのです。わたくしは、閣下の──セシリオ様の妻になりたいのです。他の誰でもなく、閣下の、です。ずっと、閣下に愛して欲しいのです」

 セシリオがひゅっと息を飲む。サリーシャは構わずに夢中で喋り続けた。

「偶然でも、閣下は助けてくださいました。わたくしは閣下に助けられました。偶然の何が悪いんです? わたくしがエレナ様を庇ったのだって、偶然お側にいただけですわ」
「……」

 セシリオは何も答えない。
 サリーシャは感情のタガが外れて、言葉が止まらなかった。今、言わなければ、伝えなければ、きっと一生後悔する。そう思って、必死だった。
 言葉足らずで不器用な自分達は、この期に及んでまたすれ違いそうになっている。