「見目麗しく、心身ともに立派で、信用できる男か……。殿下の選んだ相手なら、間違いはないだろう」

 セシリオは目を細めると、サリーシャの頬をそっと撫でる。そして、名残惜しそうにその手をおろして、優しい目でサリーシャを見つめた。

「きみのことを思うなら、ここで手離してやるべきなのかも知れない」

 それを聞いた瞬間、ドクンと胸が跳ねた。
 この先を言わせてはならない。絶対に聞きたくない。それが本心でないと知っていても、セシリオからその言葉は絶対に聞きたくないと思った。

「閣下っ!」

 サリーシャはお腹の底から声を張った。サリーシャ自身も、こんなに大きな声が自分に出せるなど知らなかったほどだ。突然近距離で大きな声を出したサリーシャに驚いた様子のセシリオを、サリーシャはまっすぐに見上げた。