そう尋ねながらこちらを見つめるヘーゼル色の瞳に、不安げな色が浮かぶ。その様子を見たサリーシャは、セシリオはフィリップ殿下が縁談を勧めるであろうことを、何となく分かっていたのだろうと思った。

「他には……殿下から縁談を勧められました」
「……ああ。──どんなやつらだ?」
「紹介してくださるのはとても見目麗しく、心身ともに立派な男性だそうです。身のこなしもスマートで、良家の出身で、信用できる方々だとか」

 笑いながら答えるサリーシャに対し、真面目な顔をして聞いていたセシリオは、聞こえるかどうかの小さな声で「そうか……」と呟いた。そして、前を向いてまっすぐに顔を上げた。

「俺は……きみに危険が迫ることを事前に把握できずに、みすみす渦中に放置してしまった。あと少し遅れたら、きみを永遠に失っていたかもしれない」
「でも、間に合いましたわ。閣下はいつだってわたくしを助けてくださいますもの」
「偶然だ。一歩間違ったら、きみは死んでいた。きみを守ると誓ったのに、俺はそれすら出来ていない……」

 セシリオは何かに堪えるようにぎゅっと目を閉じて、ゆっくりと開くと、まっすぐにサリーシャを見下ろした。そこに言い知れぬ様々な感情が入り交じっているのを感じとり、サリーシャはぎゅっと胸を掴まれるような感覚を覚えた。