「サリーシャ、危ないだろう? 剣を持っているときに飛び込んできて、怪我をしたらどうするんだ」
「だってわたくし、閣下を見つけて嬉しかったんですもの。剣を持つ閣下もとても素敵でしたわ」

 サリーシャが笑顔で見上げると、眉を寄せていたセシリオは僅かに目を見開き、視線をさ迷わせる。照れているのだろうか。そんなところもとても愛しく感じ、この人が堪らなく好きだと思った。

「モーリス様にここを聞きました。よく、閣下が一人で来ていると。ここは閣下にとって、わたくしでいう、中庭のような場所ですわね?」
「きみでいう中庭? ──そうかもしれないな。誰かに付き合って貰うこともあれば、一人で来ることも多い。汗を流すと、気持ちがすっきりとする」

 あたりを見渡したセシリオは、言われて初めてそのことに気付いたようだ。ゆっくりと視線を移動させ、最後にサリーシャを見つめた。

「──ところで、殿下はなんと?」
「アハマスは、遠いとぼやいておりました。明日、明後日はゆっくりと滞在するので、町を見たいと」
「そうか。他には?」 
「閣下には今回の件で褒賞があるから、王都に来て欲しいと」
「それだけ?」