「大野さん、ありがとうございます」
と小声で言うと、いやいや、と美菜は言う。

「そもそも、あんたが最初に冷静に対処したから、調子合わせられただけだから。

 間違って上がってきたの、顔に出さずに頭下げて、すっと避けたじゃない。

 さすが、研究棟のヤンバルクイナを入社早々捕まえる奴は肝が()わってるわ」

 ひっ、と唯由は固まる。

 三人とも一階で降りていったが、唯由は三人に頭を下げ……

 いや、平田には下げなくてよかったのだが、一緒にいたので下げ、

 そのままエレベーターに乗って上に上がっていく。

 振り返り、ふっと笑った美菜から逃げるように。