「雪村さんって言うんですけど、ご存知ありませんか?」

 村井は考えるような顔をし、
「えー、知らないなあ」
と言う。

 エレベーターだからというわけではなく、足元が不安定になったかのように唯由は感じた。

 もしや、ここは異世界?

 雪村さんが存在しない世界とか。

 蓮太郎の笑顔や真顔や脅しつけている顔が走馬灯のように浮かんでくる。

 いや、笑顔意外、ロクな表情ではないので、懐かしんでいいのかわからないのだが……。

 でもでもっ、

『蓮形寺』
と呼ぶ雪村さんの声まで頭にまざまざと浮かぶのにっ。

 ここが異世界でないのなら、雪村さんは実は研究棟に住んでいる霊っ!?

 ……まで唯由の思考が飛んでしまったとき、道馬が乗ってきた。