その頃、唯由はちょうど誰もいなかったエレベーターの中で、ひとり悩んでいた。

 まず真っ先に褒めるべき、雪村さんのいいところって何処かな?

 ……なんか考えれば考えるほど、何処もいいところな気がしてきて選べないっ、と苦悩していたとき、ちょうど扉が開き、作業着姿の男が乗ってきた。

「お疲れ様ー。
 どうしたの? 蓮形寺さん」

 苦悩するクマのように頭を抱えている唯由を見て、驚いたように言う。

 いつぞや、社外の友人たちとコンパしてるところを見られた村井だった。

「あっ、お疲れ様ですっ」
と慌てて挨拶すると、

「お疲れ。
 なに悩んでるの?

 あ、もしかして、この間のコンパのとき、手をつないで帰ってた人のこととか?」
と笑って言ってくる。

 そこで、唯由はふと気がついた。

「……村井さん。
 そういえば、あのとき手をつないでた……

 いや、私の手を引っ張ってた人、うちの会社の人だったんですけど」

「えっ? そうなの?」