唯由が去ったあと、すぐに戻らなければならないのに、蓮太郎は今日は持っていたスマホを取り出す。

 直哉に電話した。

「どうしたんですか、仕事中でしょう、蓮太郎様」

「……俺は褒めるところのない人間か」

 ええっ? となにか用事をしながら、直哉は訊き返してくる。

「ちょ、ちょっとお待ちください。
 少し時間をください」

 単に急いでいたから、そう言ったのだが、蓮太郎は、やはり、直哉にも褒めるところがないのか、と落ち込んだ。

 人に対する思いやりが足りなかったのだろうかな、と悩みながら、研究棟に戻ると、リラクゼーションルームでマッサージチェアに座っている紗江が見えた。