「今日は早く終われそうだ」

 いや、あなた、この間もそんなこと言って終わらなかったですよ。

 電話を待っていたら、いきなり蓮太郎が窓の外にいたときのことを思い出したとき、蓮太郎が言ってきた。

「景気づけにうちに来るか?」

「え?」

「うちが嫌なら、実家でもいい。
 あっちなら、執事の直哉……大王(おおきみ)もいるぞ」

 唯由の頭の中で、王冠に赤いマントの直哉が、うやうやしく(ひざまず)き、蓮太郎に靴を履かせていた。

 笑ってしまう。

 すると、蓮太郎はそんな唯由を見て頷き言う。

「うん。
 冴えない顔も可愛いが、やっぱり笑った顔の方がかなり相当可愛いぞ」