月子は部屋に入り、窓際のローボードに鍵を投げる。

 窓の外を見た。

 自分が居なくなったあと、また使用人たちは楽しげにしている。

 おねえちゃん、せっかく自分を犠牲にして出ていったのにね。

 私のワガママに振り回されて、三条もみんなも嫌そうだよ。

 ローボードの引き出しを開けてみた。

 そこにある新聞紙でできた兜をかぶってみる。

 だが、そのボロボロの兜をかぶってみても、ハリセン持って殴りかかってくる姉はもういなかった――。