だって、お姉ちゃんは今まで、散々、いい思いしてきたじゃない――。

 だが、大学を出た唯由は就職をして、部屋を借り、彼女にとって思い出深いであろうこの家を出て行った。

 きっと知っていたからだ。

 自分さえ出ていけば、この家事のできない継母と妹は、使用人たちを呼び戻すことに反対しないと。

 唯由はクビにした使用人たちを他の親族の屋敷に振り分けて雇ってもらっていたようだった。

 だが、長年、ここで働いてきた使用人たち、特にご老人たちは、やっぱりこの屋敷で働きたかったようだ。

 住み込みで働いていた人たちにとっては、ここが我が家でもあったのだろうから。

 だから、唯由は自分が出て行っても、彼らを呼び戻してもらおうと思ったのだろう。

 自分が家事をするのが嫌だったからとかではなく――。

 だって、あの人、なんか嬉々としてやってたもんな、床磨きとか。

 あれはハマるタイプだ、と月子は思っていた。