夢の方が正しいのかと思うくらい、鮮明に出てくる。


こうなっては、もう寝付けない。


「水でも飲もう。」


キッチンへ向かうと、ガサガサと音がした。


「誰かいるの?」


「……!?」



黒い人影は、何かを探すのに夢中だったせいか、すかさず逃げ場のない奥の方へ身を潜める。



その人影から目を逸らさないようにして、灯りを点ける。


「っ!」


付けるのと同時に、何かを投げられ咄嗟に取るとそれは、黒い塊だった。

そう、塊というのは虫のおもちゃ。

「あんた何してるの?」


「もっと驚くかと思ったのに残念。」


綺麗な銀色の髪に、つり目な顔が笑顔で近づいてくる。


「はぁ……くだらない。
こんな子供騙しに釣られるわけないじゃない。

で、何をこそこそとやっていたわけ?」



「明日のジェラルドショーの準備で、必要なものを貰っていたわけだ。」


「ジェラルドショー?」


「おっと、紹介がまだだった。
俺はスフェーンの騎士団長ジェラルド・オリバーだ。

俺の名前からジェラルドショー。
明日は、このはちみつを天井に仕掛けて反応を楽しむ。」


そういえば、騎士団長と言われればこんなような人いたような……。

関わるつもりないからはっきり覚えてないけど。


「馬鹿じゃないの?
こんなのに引っかかる人いないわよ。」


「それがいるんだな。
明日迎えに行くから一緒に見物しようじゃないか。」