もし、ムーンストーンを手にしていることが敵国に知られたら、ルチアは狙われる。
その後すぐだった。
子供の母親、そしてその周囲の人々から罵声をルチアが浴びることになるのは。
俺は全てを見ていた。
彼女は間違いなく子供を救った。
だが、周りはその現状を見ようとはしなかった。
「おい!今起きたのは―」
「アラン!!やめて。行くよ。」
真実を言おうとした俺を、今まで聞いたことない大声で止められた。
ルチアは町外れにある綺麗な花畑連れられるまで一言も言葉を発さなかった。
「一応聞くけど、さっき何を言おうとしたの?」
「さっきのはルチア悪くなかっただろ。
むしろ、助けたことを言おうとした。」
「余計なこと言わないで。
あんた仮にも国に忠誠を誓った騎士でしょ?」
「俺は真実を言おうとしただけだ。」
彼女の目はどこまでも冷たく、この現状を受け入れていた。
何故だか俺は、救ってやりたい。
そう思った。
これ以上こいつをこのままにしたら、完全に感情が無くなってしまう。
俺の手が届かないところまで暗闇の中に行ってしまいそうな気がした。