俺が熱出して数日がたった頃には、俺のしつこさに諦めたのか追い出そうとしなくなった。


前まではあんた呼ばわりされてたけど、今では名前で呼んでくれている。(ほとんどはあんた呼ばわりだが)


買い物の時も、付いて来るなと言われず一緒に来れた。


町に入った瞬間に違和感を覚える。


いつも見回りで来る時は賑やかなはずなのに今日は、まるで誰かに殺されてしまうかのような緊張感と冷たい視線を感じた。


ルチアに対する眼差しはこれ程までに酷かったのかと実感すると同時に、彼女自身は何も感じず歩く姿に心が傷んだ。


この視線を数十年も1人で乗り越えてきたのかと。


彼女の知り合いであるトドという名の爺さんの店に着く。


「そろそろ来るだろうと思って用意しておいたよ。」


「いつもありがとう。」


爺さんだけはルチアに冷たい視線を送ることなく普通に話していた。


俺たちの言い合いにも優しく笑っていてまるで孫のような扱いだった。


だが、俺はどこかで見たことのあるような顔でルチアが去った後に問いかけた。


「なぁ、あんた本当にここで商売やってる人か?」


「そうだが…。」


「なら、いい。
俺の勘違いだ。顔見知りにちょっと似ていてな。」


気のせいか…。