彼女は固く口を結ぶ。
自分でもずるいとは思うが、ここまでしないと彼女に話を聞いて貰えない。
触れるふりをすれば、来てくれるだろと首筋に顔を埋めようとした瞬間、目眩がして視界が暗くなった。
いつ頃まで視界が暗くなってただろうか。
野菜を煮込むいい匂いがして目を覚ます。
「目、覚めた?」
彼女の声が聞こえた。
俺、なんで目眩がしたんだ…?
「熱出てあんた倒れたの。」
「はい。昨日から何も食べてないんでしょ?」
理解ができていなかった俺に、先程いい匂いがした野菜スープが差し出された。
「ありがとう。美味い。」
想像以上に美味くて、言葉にならず夢中で食べた。
「ごちそうさま。
お前、意外に料理上手いし優しいんだな。」
「勘違いしないで。
家の中で倒れられて悪化でもしたら、後味悪いでしょ。」
ルミナスがとても優しい子と言っていて理解が出来なかったが、今になってわかった。
これが本来のルチアなんだって。
俺は王様の命令で連れ戻すはずだったが、俺自身がルチアに興味が湧いた。
本当は優しいのに、わざとらしく無愛想にして距離をとるのか。