「で、でも私は今まで何でもやってきましたし体力にも自信があります! それくらいの事くらいなんてことないですよ?」
そんな風に加瀬の好意を真っ直ぐに受け入れられず、ついついこんな事を言ってしまう。琴は自分自身の失言に気付きながらもそれを上手く誤魔化すことも出来ないままオロオロとしてしまうが、加瀬はそんな彼女に近づくとそっと耳打ちをする。
「俺さ……けど、本当にいいのか?」
「……なっ! なんてことを言うんですか!?」
加瀬の言葉に琴は顔を真っ赤にして彼を思いきり突き飛ばすが、突き飛ばされた加瀬はそんな事を見ておかしそうに笑う。
彼女が揶揄われたのだと気付いた時にはもう遅くて、彼の言葉でとんでもないことを想像した自分自身が恥ずかしくて悔しくて仕方がないという顔をする。
「ふっ。顔真っ赤、どんな想像をしたんだか? 俺の奥さんは」
「か、加瀬さんの所為です! 貴方があんなことを言わなければ……」
意地悪な表情を浮かべる加瀬に噛みつけば余計に彼を楽しませるだけだと分かっているのに、単純な琴は彼の思惑にすぐに引っかかる。
「あんな事? それって夜の俺は激しいくらい……寝相が悪いってところ?」
「なっ! そんな言い方……私を騙したんですね!?」