みんなに注目されてたって、それは常盤くんの話だ。今日だって男子は体育館の半面を使ってバスケをしてたけど、とびきり上手で女の子たちはみんな常盤くんを見てたよ。わたしだって、そうだよ。


「普段はおとなしいのに、体育できるってけっこうなギャップだよなって」


うーん。これって喜んでいいことなのかなあ。

返事に悩んでると、そんなわたしに気づいたのか常盤くんは言葉を付け足してくれた。


「すごいなって褒めてたよ」


褒め言葉なのか。そっか。
言われ慣れない言葉がくすぐったい。


「ありがとう、常盤くん」


思わず頬が緩む。うれしい。今日は金曜日だけどいい日かもしれない。


「体育好きなんだ」

「うん、知ってる。去年のスポ大は活躍してたしマラソン大会も入賞してたし。今年は仲間だから頼もしいなー」


…どどどどどっと心臓の動きが速くなる。

だって去年は別のクラスで。今よりもっと話す機会はなくて。

日葵と千昂くんがいるときに数秒目が合うくらいで、それくらいしかなかったのに。

スポーツ大会やマラソン大会のこと、知ってるなんて。わたしが体育を好きなこと、知ってるなんて。


そんなこと夢にも思わなかったから。


「駒井にさ、わたしの親友はお姫さまみたいにおしとやかで可愛いけど、体育の行事のときはスーパーヒーローみたいなんだって中学の頃から聞かされてたんだ」

「あ…そう、なんだ」


声を、しぼり出した。