寝てないみたいだった常盤くんは一時間目の古文から机に伏せて眠ってた。

周りのイタズラにも先生からの叱咤にも気づくことはなく堂々とした居眠り。お昼の時間に起きた時は袖の金ボタンのアトが頬にできていることをみんなに笑われてて、常盤くんはふてくされた態度を作りながらも笑ってた。


楽しそうな姿。

その輪に入った親友も、一緒に笑ってる。


もしも、朝声をかけたのがわたしだったら。
もしも、日葵が声をかけるのを止めていたら。

…もう少しマシな笑顔を見れたのかな。


日葵のふたつ結びを見て、心臓が痛む。

痛い。

親友なのに。大好きなのに。


それでもこの気持ちを無くしたくない。



今日、金曜日、今週最後の授業の後、和央先生はHRを削ってみんなを帰した。みんなは喜んでたし、「明日は休みだ」と常盤くんもわいわい楽しそうに校舎に戻っていった。


和央先生に引き止められ、体育の授業の片付けをしてたら帰るのが遅くなってしまった。

手伝うと言ってくれた日葵には断った。せっかくのデートなのに時間がもったいないし、一人でも片付けられるくらいだったから。


平均台をまっすぐ歩いたり跳び箱を飛んだり、そういうマット運動も好き。高跳びも好きだし走るのもわりと速いほうだと思う。球技が一番得意。だけどラケットとバットと幅跳びは苦手。

今日のマット運動は楽しかったなあ。



「露木っていつも帰るの遅くなるよな」



教室で一人鞄に荷物を入れてると、ふいに話しかけられた。もうクラスの人は誰もいないと思ってた。

顔を向けて、声の主を見なくても、誰なのかすぐにわかる。