だから金曜日は、すごくキライ。


「メジャーリーグ見てたら朝になってた」

「相変わらず野球好きだねえ」

「露木もおはよ」

「お、おはよう、常盤くん」


ごめんね。

言えない言葉を、心の中でそっと、つぶやいた。



「そんな好きならやめなきゃよかったのに」

「選手はもう面倒なんだよ。今は観る専門。それより今日髪どーしたのそれ」


あ…と思った。

だけど会話を止める方法を、わたしは知らない。


そうやってまた後悔が募ってく。



「今日はデートだからおめかししたのです」


自分の髪を握って持ち上げる。同性のわたしでもかわいいと思っちゃうしぐさで、心臓がきゅうっと狭くなる。

…こういう自分が、いやだ。


「ぜんぜんかわいくないわ」

「なんだと?わたし、清雨がなんでモテるのかわかんないっ」

「おれは千昂がなんで駒井なんかがいいのかわかんなけどな」


憎まれ口でお互いをからかって、楽しそう。

でも、笑顔は、ちょっとぎこちないように見えてしまう。わたしの目が、気持ちが、おかしいのかもしれない。


正門を入ってすぐ横にある桜の木の緑の葉を風が揺らす。

後悔と、憂鬱と、情けなさとふがいなさ。それから少しのいじらしさで、わたしもあの葉っぱたちみたいになる。


揺さぶられる。…気持ちが。

頑張りたい。何かしたい。たとえ気づいてもらえなくても、自己満足でも、いつか巡り巡って彼の笑顔になれたらいい。

そういう願いにも似た気持ちは確かに存在してるのに、わたしにできることは何もないような、そんな気がした。