『ずっと、こうしていたい』
荒い呼吸をしながら切実そうに言葉を紡がれ、やや紅潮した色気に満ちた顔が近づいてくる。
『より子……愛してる』
唇が重ねられる寸前で、脳内にとろけそうな声が響いた瞬間──。
毎朝聞いているアラームの音が流れてきて、ぱちっと目を開いた。視界に入るのは旦那様の顔ではなく、白い天井。
「なっ……んて欲求不満な夢……!」
両手で顔を覆い、寝起きの掠れた声で呟いた。
約三カ月前の初夜を夢に見るなんて、朝っぱらからめちゃくちゃ恥ずかしいし気まずい。しかも愛の言葉を囁かれるという、あの日にはなかったオプションつき。
恋の力は絶大だ。あれほど苦手だったのに、好きだと自覚したらもっと触れたくなって、こうやって夢にまで見てしまって困るほどなのだから。セックスをするのは子供を作るときだけという条件を提示した自分を蹴り飛ばしたい。
それくらい、律貴に抱かれたあの夜は幸せだったのだ。
肌に触れる手つきも、囁かれる甘い言葉も、熱い視線も。頑なに行為を拒否し続けてきた私の身体と心を柔軟にして、苦手意識を取っ払ってくれた。
ついでに、恋心も自覚するくらい愛しさが大きく膨らんだ。