「そんな顔すんなよ。

……俺だって、お前のこと無理やり"アイツ"から奪ったようなもんだろ」



転校してすぐには色んな噂が飛び交ったものの、最近ではぱったりと、紘夢の名前を聞くことはなくなった。まるではじめから、居なかったみたいに。

婚約の話がニュースになった際に連絡が来て以降、連絡も取り合っていない。



「付き合ってるのをわかってて外から引き裂こうとしたのは、俺も同じだしな。

いくらお前が俺のこと好きでいてくれてたとしても、俺の方がタチ悪いことしてんのには変わりねーし」



たしかに、わたしの気持ちがいくら恭に向いてたと言っても、恭の行動は褒められたものじゃないんだと思う。

だから、紗七さんの行動を、彼は責められない。



「……そうね」



悴みそうな手をポケットに隠して、再び歩みを進める。

凍てつくような寒さだけれど、クリスマス当日の今日も雪は降らなさそうだ。



……もし、再会するまでの間に。

恭が別の彼女を作っていたら、わたしはどうしたんだろう。




「ねえ、恭」



「ん?」



「家に帰る前に、ちょっと寄り道したいんだけど」



再会しなければよかった、と思うんだろうか。

それとも、再会できてよかったと、今と変わらず思うんだろうか。



自分のせいで、誰かを傷つけてしまうとしても。



「ちゃん終わりにしなきゃ」



「……あんまり無理すんなよ」