「ありがとうございます。
……もう連絡するのもやめていただけますか?」
わたしと過ごしている時に、何度か着信があったことも知ってる。
恭は極力わたしの目に触れないようにしてくれてたみたいだけど、部屋を出ていったりするものだから、その不自然さで気づくわけで。
「でも仕事が、」
「彼のお母様に事情を話しました。
"今後一切、仕事での関わりも作らないようにする"と約束して頂いたので、仕事で連絡する必要も無いと思います」
「っ……」
「だから問題ないですよね?」
きっとわたしは、ひどいことを言ってるんだろう。
彼を好きな気持ちに呑まれて後先考えないことはしたくなかったけど、これもやり過ぎだろうか。
「どうして、恭なの……」
「………」
「あなた、ウチの職場でも随分男社員には気に入られてるらしいじゃない……
その顔なんだから、男なんて他にいくらでも寄ってくるでしょ?なのにどうして、どうして恭なの」
何にも負けないくらい自由な生き方に憧れた。
出会った時からずっと、恭はわたしの光だった。
「何か勘違いされてませんか?
……仮にわたしが恭を選ばなかったとしても、別にあなたが恭に選ばれるわけじゃないと思うんです」
「な、っ」
「いつまでも想うのは良いと思います。
でも恭のことが大事なら、これ以上迷惑かけないでください。……彼はわたしの婚約者なので」