「どういうつもりだよ、暖」



「それはこっちのセリフじゃねえの」



普段鍵がかかっているはずのそれは、予想していたよりも簡単に開いた。

そこにいた暖に声をかければ、パッと鞠から離れる。……いや、今は暖より鞠だ。



「鞠、」



すこし屈んで鞠の顔を覗き込めば、目が赤い。

泣かせたことは見ただけで分かる。罪悪感やら愛しい気持ちやら、何が何だかよく分からなくなって、鞠のことを強く抱き締めた。



ごめんと囁けば、首を横に振ってくれる。

泣かせたけど怒らず待っててくれた鞠に、無意識に肩に入っていた力が抜けた。



大丈夫、と信じてはいたけど。

どこかで、鞠に嫌われたら、という気持ちがなかったわけじゃない。




「不安にさせて悪かった。ごめん。

言い訳もしねーし、順番に話すから聞いてくれるか?」



「……うん」



「ん。……その前に、」



抱きしめたまま、右手でダウンジャンパーのポケットを探る。

すこし身体を離そうとした鞠が離れないように左腕で抱き寄せ、ポケットの中でケースを開いて指輪を取り出した。



「遅くなってごめん。クリスマスプレゼント」



「……え」



左手を掬えば、いつもならこんな早朝に嵌めているはずのない指輪が、薬指に嵌ってる。

それを嵌めて待つくらい、鞠のことを不安にさせたんだろう。重ねるようにして新たな指輪を嵌めれば、鞠はわかりやすく目を瞬かせた。