大事なものを守るために別れても、それでも好きでいてくれた。
俺は藍華の幹部に色々言われるくらいベタ惚れだけど、なんだかんだ鞠もベタ惚れでいてくれてると思う。
あすみとリカも、相当仲良いんだろうけど。
そのふたりが「仲良いな」と言ってくるくらいには、お互い好きで一緒にいる。別れていた時間さえ、知らないことなんてないほどに埋めたいと思う。
「……お前がダメとは思ってねーよ。
実際お前にも、何回か婚約話は来てただろーが」
「……よく知ってるわね」
「まあ、いとこだしな」
「………」
キッチンに立つ紗七が、困ったような顔をする。
それから、無理やり口角を上げようとしているように見えた。
「……断ってきたのよ、全部。
わたしにはずっと大事な人がいたから」
「そーかよ」
「これでも結構好きなんだけど」
「でも俺はあいつにしか興味ねーよ」
紗七がダメなわけじゃない。
俺が、鞠じゃねーと嫌なだけで。
「恭がそんな顔で言い切ること、今まで無かったのにね」
どこか寂しげな紗七の声。
今までなら"いとこ"として心配してやれたソレも、今はただ傷つけるだけで。「そうだな」と返すだけにとどめれば、紗七はそれ以上口を噤んだ。