仕事のときは割り切ってるけど、"ただのいとこ"にしては明らかに距離が近すぎる。
鞠も、察しが良ければ気づいてるかもしれない。
だからこそ、いくら倒れたと聞いてもここに来たくはなかった。電話が掛かってきた時に、思わず渋って鞠に確認したのはそのせいだ。
一緒にクリスマスを過ごすのが初めてじゃないにしても、楽しみにしている鞠と過ごしたかった。
「紗七」
「うん」
「あんまり無理するなよ」
はっきり言ってくれたら断れるものの、紗七が何も言わない限り、俺はただの自意識過剰なわけで。
先回りして断るのも変な話だし、こうやってさり気なく距離をとることしかできない。
……鞠のこと不安にさせたくねーんだけどな。
「ふふっ、ありがとう。恭。
……っていうか病院の中あったかいから、いい加減ダウン脱いだら?」
「……ん」
確かに暖房のきいたところでダウンを着てても暑いだけだし、このまま過ごせば外に出たとき寒い。
ジャンパーを椅子に掛けて、「ちょっと電話してくる」と紗七の病室を出る。
「……、」
なんかすげー疲れる。
点滴が終わり次第、さっさと送って鞠のところに帰るしかない。病室でスマホって触りづらい。メッセージを送るくらいならすぐ出来るけど、今はなんとなく、メッセージで済ませるのが嫌で。
「あ、」
鞠に電話しようと、一度下へ向かっていたとき。
何気なく時刻を確認したその瞬間に、スマホの電源が落ちた。