働きすぎで倒れてるにも関わらず、まだ仕事をしようとする紗七。
これは見張ってねーと何度でも同じことをしそうだな。今は手の届く位置に仕事が無いから、仕方なくなにも出来ないだけで。
「……悪かった。
俺の教育係で、かなり残業もさせられてただろ」
「そう?
労基に引っ掛からないくらいの残業だけど」
「でも実際こうなってる」
パイプ椅子を引き寄せて、腰掛ける。
紗七は「そんなことないわよ」と強がってるけど、そんな風には見えない。真っ白な病院のベッド。清潔感はあるけど、本来よりもその人自身が弱々しく見えてしまうのは、俺だけだろうか。
「……次から教育係、変えるとか。
紗七以外にも手伝ってもらうとか、何か考えるって」
ウチの母さんからメッセージだけ来てた、と。
紗七に伝えたら、なぜか困ったように笑われてしまった。
「別にいいのに」
「心配されてんだろ」
「そういや、彼女はどうしたの?」
あまりに急な話題変更。言いかけた言葉は色々あったけど一度呑み込んで、「家で待ってる」と返す。
今はまだ藍華のたまり場かもしれねーけど、実家に帰らず待ってると言ってくれていたし。
「……仲良しねえ。
わたしも、恭の家なんてほぼ行ったことないのに」
「もう、半分自宅みたいなもんだしな」
あの家に住んでいる誰よりも、キッチンを使いこなしている鞠。
俺がいなくても自由に過ごしていることを考えたら、もう自宅と言っても過言ではない。