指先が、ぴくりと引き攣るように震えた感覚で我に返る。

ハッとまわりを見回しても、当たりは数時間前に見た景色と何ら変わりない。……いま、何時?



「、」



いつの間にか寝てしまっていた、と、リビングのソファに沈んで重たい身体を起こす。

それからスマホを手に取ってみれば、時刻は『6時17分』。……恭は、まだ、帰ってきてない。



4時くらいまではウトウトしつつも待っていたけれど、それ以降の記憶が無い。

スマホに恭からの連絡はなくて、こぼれたため息はすこし震えていた。



『……もしもし?』



何度掛けても繋がらない電話。

6度目の呼び出し相手は、恭じゃない。



誰かに甘えるなんて、できないと思ってた。

けれど恭とまた一緒にいるようになって、随分と弱くなってしまったのかもしれない。誰かに頼ることで自分の弱さを知られたくなかった高いだけのプライドは、いつの間にか姿を消していた。




「暖くん、」



『え? ……え?泣いてんの?』



「ないて、ない……」



朝6時に連絡してくるなんて、いくら友達でも迷惑だろう。

それでも1回で電話の呼び出しに応えてくれた彼は、少し慌てたように『どうした?』と聞いてくれる。それを聞いたら、はらりと涙がこぼれ落ちた。



「っごめ、電話するつもりなかったんだけど、」



『恭帰ってきてねえの?』



図星をさされて、言葉に詰まる。

それを肯定と受け取った暖くんが、めずらしく乱雑に舌打ちするのを電話越しに聞いた。