「……病院行くの?」
「いや……」
恭が、言葉を濁す。
倒れて病院に運ばれたことも、親戚だから恭に連絡が来ているのも、なんとなく想像がつくのに。言い渋る恭は、わたしとの予定に悩んでくれているんだろうか。
「……行ってあげたらいいとおもう」
「鞠、」
「だって"働きすぎで倒れた"んでしょ?」
わたしの言葉に、恭がギュッと眉間を寄せた。
苦しそうなその表情の意味を、知ってる。どこまでか真実なのかは結局闇の中で分からなかったけれど、実際わたしのお母さんは、それで亡くなった。
……だからこそ。
わたしに"行かないで"って言う権利なんてない。
「行ってあげて。きっと、心細いだろうから」
たとえ今日が、クリスマスイブだったとしても。
「なら鞠も一緒に、」
「ううん。しんどい時に他人がいても迷惑なだけよ」
ついて行って、気を遣わせたら意味が無い。
だから、と断れば、恭は黙ってすこし悩んだあと、電話の向こうに「今から向かう」と伝えた。
ちらりと見えた画面。
電話の相手は、まだ会ったことのない、彼のおじい様。