わたわたしながら否定するわたしに、ゆったり笑みを浮かべて「ふぅん?」なんて言ってる暖くん。
種だけ撒いた張本人は、我関せずだし。
「ま、相手して欲しくなったらいつでも呼んで?」
「何の!?」
「それはちょっと。恭が怒るし?」
彼はきっと、わたしのことを弄びたいだけだ。
そう思って眉間を寄せると、案の定「冗談だよ」と暖くんは笑ってる。でもなんだかその表情が気になってジッと見つめていたら、不意に恭と手が触れた。
「……っ」
みんなに、気づかれないように。
握るでも絡めるでもなく、さりげなく触れ合うだけの指先。別に悪いことをしているわけではないのに、背徳的な気持ちにさせられるのは何なのか。
「お疲れ様です……!」
けれど結局、たまり場につくまで手を繋ぐこともなく。
下っ端の子たちに挨拶されながら幹部室に向かい、各々好きなことをするいつもの時間。
「ねえねえ、鞠ちゃん。はいコレ、プレゼント」
部屋の隅っこで、こそこそと話すわたしとリカちゃん。
わたしとリカちゃんが女子トークをするのもいつものことだから、こんな風に内緒話をしていても、特に何か怪しまれたりはしない。
本当に誰にも聞かれたくない話だったら、メッセージ上でやり取りするし。
彼女に「ありがとう」と返して、わたしもバッグに忍ばせていた包みを彼女に渡す。
「いつもありがとう、リカちゃん」
「えへへ、ありがとう」