「研修旅行?」
チカくんから聞いた言葉を、そのまま反芻する。
お墓参りを終えたあと、恭と待ち合わせて藍華のたまり場に来たわたし。すっかり危険が排除されて、藍華はトラブルもなく今やほぼ安全地帯。
わたしのことも普通に出入りさせてくれるし。
何よりもうひとつ、大きな進展。
「そうそう。
まあ、ほかの学校で言う修学旅行なんだけどねー」
「なるほど……」
リカちゃんが、藍華のたまり場に出入りするようになった。
あすみくんとリカちゃんのふたりが付き合ったことを幹部が知ってからも、一応、藍華のメンバーには内緒にしてたけど。
改めて、付き合っていることと。
今後はリカちゃんも出入りすることを、あすみくんは自分の口からみんなに説明したそうだ。
「隠すやり方が間違ってたとは思わねえけど。
恭を見てたら、大事なもんは自分で守んのも、悪くねえなって思ったんだよ」
リカちゃんのことみんなに話したのね、と。
あすみくんに直接言ったら、そう返ってきた。
大事にする方法は、人それぞれだろうけど。
恭の"大事なもん"が、わたしだと言われていることに気づいて、ちょっと恥ずかしくなった。
そんなリカちゃんを含め、藍華の幹部は全員が同じ高校。
そしてその"研修旅行"とやらが、来月の冬休み明けにあるらしいのだけれど。
「こればっかりは、行かねえと卒業できねえからな。
……あんまり出歩かないって約束できるか?」
あすみくんが、なんとも不安そうな顔を向けてくる。
というか、あすみくんだけじゃなくて、全員。
……もしかしてわたしのこと子どもだと思ってる?