「好き、恭」
「ん、俺も。……すげー好き」
恭が、わたしだけにくれる言葉。
ほかの人には「かわいい」も「好き」も言わない。……わたしだけ、だ。
「なんか一緒に動画でも見るか。んで適当に寝よ」
「うん」
恭がポケットからスマホを取り出すと、薫るような甘い空気は姿を消してしまう。
つられて、わたしも自分のスマホに手を伸ばした。特に電話も来てないから大丈夫だとは思うけど、そういえばずっと見ていなかった。
確認してみれば、果歩から冬休み遊びたいという旨の連絡があるくらい。
大丈夫そうねとスマホをスリープにして、恭の腕枕に頭を乗せる。
「腕つらくなったら言ってね」
「ん」
一緒に動画を見ていたら不意にゲームの広告が流れてきて、最近恭がゲームをする時間が減ったことに気づく。
前まではふたりきりの時でもゲームしてたけど、最近は藍華のたまり場で暇な時に遊んでるくらいで、ほとんどゲームしなくなった。
「……最近ゲーム飽きちゃったの?」
「ん? いや、そんなことはねーけど。
お前と過ごすときにスマホ触ってんのもったいなくね?」
世の男性にはデート中だろうとゲームする人がいるらしいっていうのに。
恭の優しさが嬉しくて、えへへと頬が綻ぶ。わたしも恭と一緒の時にスマホをあまり見たくない人だから、その気持ちが嬉しかった。
一度スマホを置いた恭が、空いた手で頭を撫でてくれる。
部屋の外から薄ら聞こえる物音と話し声に、こんな日もなんだか悪くないなと思った12月のとある夜。