前に会った時、また次と約束してくれた恭のお母様。
「ドレスコードとかは無いから」と微笑んでくれるけれど、ご両親とランチというだけで難易度が爆上がりしてる。
「だって橘花社長に電話で確認したら、恭のところに行ってるはずだって言われたんだもの。
悪かったわね、せっかくのラブラブな時間邪魔しちゃって」
「そう思うなら邪魔すんじゃねーよ」
「でも、ラブラブし終わったあとに、わたしたちが帰ってきてること知る方が嫌でしょ?
……まあ、そういう趣味があるなら止めないけど」
「一言多いんだよ。……ったく、」
恭が、ベッドの上にちょこんと座ったままのわたしに手を差し伸べる。
よくわからないまま手を差し出すと、それを繋いだ彼は「風呂行くだろ」とわたしの手を引いた。
……うん、行く、けど。
ご両親が帰ってこられてるのに、わたしが先にお風呂に入ってもいいものなんだろうか。というか、さすがにご両親がおられる時に、一緒にお風呂には入れないし。
「わたし朝シャワー派だから気にせずどうぞ。
パパも深夜にしか入らないから、先入っちゃって」
「ありがとうございます……」
「恭。鞠ちゃんのお風呂覗くんじゃないわよ」
「自分の息子のことをなんだと思ってんだ」
恭のツッコミにもまったく動じることなく、恭のご両親は寝室と思しき部屋に入っていく。
着替えだけを持って恭と下におりると、いつものようにお風呂をお借りした。
わたしがお風呂上がりにお母様に絡まれないようにというだけの理由で、恭はリビングで待っててくれていて。
しっかり温もってから恭とお風呂を交代し、部屋で髪を乾かす。
男の子、って感じで、でもシンプルな恭の部屋。
そんな部屋にわたしの着替えと、スキンケア用品と、その他もろもろ。