「……鞠」



指を搦め取られて深まる口づけに、自然と呼吸が荒くなる。

搦めたことですこしあたためられた恭の手が、わたしの腹部を撫でたとき。



「たっだいまー!」



「……!」



勢いよく開く部屋の扉。

思わず固まるわたしと恭。……そして、「あ」と声に出すのは、扉を開け放った張本人。



「リン……だからノックしろって言ったのに」



恭のお母様と。その後ろからため息をついて顔を出したのは、恭のお父様。

それぞれお会いしたことはあるけれど、おふたりが一緒にいるのをはじめて見た。……じゃなくて!




「っ、お、おじゃましてますっ」



慌てて恭の身体を押し返し、起き上がる。

恥ずかしすぎて、絶対にいま顔が真っ赤だ。



「こんばんは、鞠ちゃん。

ごめんね、まさか一緒にいると思ってなくて」



「いえ……!

むしろすみません、勝手にお邪魔してて……」



「ううん、恭と仲良くしてくれてありがとう」



その"仲良く"すら、意味深に聞こえてしまうのはどうしてだろうか。

ちらりと恭を見てみれば、彼は「なんでいんだよ」と不機嫌さを隠さない顔で両親を見る。



「あら、ダメなのかしら?

年末年始はまた帰ってこられないから、今年最後の帰国で家に帰ってきたのよ。ついさっき、パパとディナーを済ませてきたところなの」