蒔が女の子だから、いつか思い出して嫌な思いをするかもしれない、と。恭が配慮し過ぎなくらいに遠慮してくれてるからふたりはお風呂に一緒に入ってないけど、蒔は恭とも入りたがってる。

それと同じようなもので、ただどちらかが風邪をひくリスクを考えたら、ふたりで入って温まるべきなのでは?と思ったんだけど。



「そういう誘い?」



「……なにが?」



「俺のこと誘ってんじゃねーの?」



あっけらかんと尋ねられて、ようやく意味を理解したわたしの方が顔を赤くするのはどうしてなのか。

っていうか、恭さん、なんか近いんですけど……!



「さ、そってはない……かな」



じりじりと、ベッドの端に追い詰められる。

背中が固いものに当たって、それがヘッドボードだと気づいた時にはもう、逃げられない。




「でも俺は誘われたと思ってんだけど」



「や、そんなこと言われても……」



「俺のことドキドキさせたかったんだろ?

なら、させた責任は取らねーとダメじゃね?」



部屋着の裾から入り込んだ指先の冷たさに、思わずぴくりと震える。

恥ずかしいのに燻って、好きで、それで。



「お風呂、そろそろ沸くから……」



「追い炊きすれば冷めようが入れんだろ。

……まあ、その前にあったまれるしな」



あってないような抵抗も、くちびるを奪われたことによって散る。くったりと力が抜けた身体は、なだれ込むようにベッドに沈んだ。

黒いシーツに、ピンクの髪が広がって。