泣いたり、苦しんだり、自分の力ではどうする事も出来ない感情を
殺すために勉強をして、誰にも頼らないでも生きて行けるように
このバッジを手に入れたんだ。
そう、思って胸に着いてるバッジに触れた。

その仕草が姉の琴線に触れたのか

「そうやって私を見下して生きてきて楽しいの?」

姉から投げられた言葉に傷つくかと思ったけれど不思議と何も感じない。

「そう思いたければ思っても良いよ。私の心が解るならそうなんじゃないの。」
「香菜、言い過ぎだ。 柚菜もそんな事を思っていないのに・・」
「私がどう思っているかなんて2人に解る訳無いでしょ?
私の何を知ったつもりでいるの?」

あ~こんな風に一那も姉も傷つけるつもり無いのに・・
私の気持ちなんて知らないくせに・・・
もう、ほっといて2人の世界に浸れば良い


「柚菜、ごめん・・・心にも無い事を口にしてしまって・・私はお姉ちゃんで
いたかったのに、柚菜は私から離れて行って追いつかないところに
行ってしまった事が納得出来なくて、それが自分のせいだって解っていたから
余計に・・」

「別にお姉ちゃんが謝る必要はないよ」
「あるの! 私はカズ君にも柚菜にも謝らないと・・・私がカズ君にキス
したことを」
「別に謝る必要はないでしょ?あの当時、私は中学生の子供だった。
一那に対する気持ちも初恋みたいな感覚を持っていたのは私だけで
一那は違っていた。それだけだよ。」
「違う! 違うの・・・あのキスに特別な意味なんて無かったの・・」

「特別な意味があるか無いかは私には解らない。でも、私は
好きな人とじゃないとキスはしないし、出来ない。だからあのキスに
特別な意味が無いってお姉ちゃんが言うのなら 私とお姉ちゃんは
話し合っても無駄だと思う。」

「・・柚菜・・・ゴメン。 そんなに傷つけるつもりじゃなかった」
「別に私を傷つけるつもりじゃなかったんでしょ?だったら別に
良いよ。過去は変えられないだから。」
「あのキスで柚菜を傷つけるつもりじゃなかったのは本当だけれど
その後の行動は確実に悪意があった・・・」
「香菜、悪意ってどう言う意味?」

「・・・・あの日、柚菜を迎えに部屋に行ったよね?私は柚菜の顔を見た
瞬間に泣いていたのが解ったの。その理由も。でも、カズ君との約束が
反故されるのが嫌で気がつかないフリをして、後から柚菜に話すつもり
だった。
でも、心の何処かで柚菜の恋心はオープンに出来る羨ましさが
勝ってしまった。
だから気がつかなかった事にしたの。
柚菜は未だ子供だからと気にしないはず。
明日になったら又、何時もの3人に戻れると思って朝を迎えたのに、
結局旅行中に元の3人に戻ることは出来なかったけれど、
東京に戻って何時もの日常を過ごせば大丈夫、
そう自分に言い聞かせて変わっていく柚菜を見ない事にしたの。

学園祭の頃には何時もの柚菜に戻って一緒に周れるって思う事にしていた。
それなのに明応の体育祭も学園祭も柚菜は来なかった。
流石に学園祭に来なかった時はカズ君と焦った
お互い柚菜に声を掛けていると思っていたし
今までは何も言わなくても来ていたから。
何処を探しても居なくて、柚菜狙いのクラスメイトや先輩が
今年は柚菜ちゃん来てない~って嘆きが聞こえて来ていたから
本当に居ないんだって・・・カズ君以上に私が焦っていたの。でも、そんな事
カズ君に言えないし、カズ君の顔を見たら怖くてその話をする事も出来なかった。
カズ君の表情で私が柚菜が来ない理由を話したらカズ君に見捨てられると
思って、私は口を噤んでしまった。
家では両親が日々痩せていく柚菜にオロオロしていて、その理由を
一生懸命探していた。
私のことなんて気にする余裕も無いほどにね。
それも、また 何処かで許せなかったかもね」

そう涙ぐむ姉。