【完】好きだからそばにいるんだよ

「最悪。それを食べながら話を聞きたかったのに。凛、コンビニ寄ってから帰るよ!」







「了解!限定のジュースとお菓子も買って帰ろう。もちろん、白矢の奢りで!」







「「さんせーい!」」








「勝手に決めるな!ていうか、そろそろ離せお前ら」







日和の話を聞くまではこの腕を離してはならないと目を合わせて通じ合う3人。





3人の結束力に観念した白矢はコンビニで奢ることとなった。






「電車代で結構痛いのに。まさか奢ることになるとは...」





財布の残高を見て今月のお小遣いが残り少ないことに落ち込む白矢。お菓子とジュースが揃って満足する美華たち。






紬の家に着くと早速、買ってきたお菓子とジュースを広げて、白矢から話を聞く準備を整える。






「さぁ、早速聞かせてもらいましょうか...!」





目を輝かせながら白矢を見つめる凛。その横で情報通の紬はメモを持ち、構える。





美華は走って体力を失って疲れが溜まってきたので寝転がりながら話を聞く。





「何から話せと...」
「まず、日和は元気だった?」





「元気だったぞ」




凛は質問を続け、紬は1つずつメモをとった。






こんな分かりきった質問をするのか。これならなんとか答えられるな。






そう思った白矢は気が楽になり、どんな質問でも受けて立つ!という余裕な表情を見せる。






がしかし、凛の質問はこんな甘いものじゃなかった。白矢は後に後悔する羽目になる...。






「じゃあ次。日和のぴよ吉姿はどうだった?」






リュックからスマホを取り出し、自慢げに日和のぴよ吉姿の写真を見せる。






実際会って来てその可愛さを堪能した白矢はこの写真をホーム画面にしようと考えていた。






美華も写真が見たくて体を起こして凛と紬の間から写真を覗き見る。






「日和が本物のヒヨコになった...!」






日和のぴよ吉姿にメロメロな凛。一向に白矢のスマホを離そうとしない。






「凛見せてよ!1人だけずるい。白矢くんこれ後で送って!」






「うちも!待ち受けにする!」






やはり考えることは同じだ。白矢はそう思った。




「あたしも質問するね」




少しずつ疲れもとれて美華は自分から質問をし始める。




「まだするのか。これで最後にしろよ」




疲れている上に、明日も学校があるので早く休みたい白矢だが、美華たちはそんなの関係なく、補習で溜まったストレスを日和の話で解消しようとしている。





なので、これだけじゃ美華たちの質問は終わらない。





「日和とイチャついた?」





「は!?」





「あぁー動揺してるってことはイチャついたな。この色ボケ男が!」





「色ボケって...俺はそんなんじゃ。それに、俺が日和とイチャついたとしても、お前たちには話すわけないだろ!?」






それは自分だけが知っておきたいこと。日和とのエピソードは誰にも知られたくない。





あんなに可愛かった日和を川口たちに教えるなんて勿体ない。絶対に話すものか。





緊張して、顔を赤く染めて俺に本音を話してくれた日和。引かれるかもしれないが、もう少し見ていたかった自分がいた。





少し見ない間に日和は大人の女性に近づいていた。







いつもは小さくてヒヨコみたいに可愛い日和だったが、今日の日和は大人っぽいところが見ることが出来た。
『可愛い』って言われたいって言われた時、素直に可愛いと言いたかったが、それはまだ俺には出来ない。





というか、出来なかった。これを言ってしまったら、もっと可愛くなる日和を見れない気がしたから。





離れているから気持ちは伝えた方がいいと思うが、俺は違う。離れていてもじっくり時間をかけて日和が、会う度に可愛くなる姿を見たい。





ちょっと意地悪だよな。自分でもそう、思う。俺は日和に対して意地悪だ。





帰り際に日和は俺が嫉妬している姿を見てみたいなんて思っていたんだろう。





気づいていたがそれは男として聞きたくなった。彼女に嫉妬している姿を見れるなんてカッコ悪いからな。





だからあの時も意地悪をした。キス顔になっている日和を見て、俺もキスがしたいなって。あのままして、俺だけを考えてほしかった。






その時の日和は緊張して戸惑っていてプルプル震えてた。そしたら目が覚めた。それはまだ早いって俺の理性が教えてくれた。
「なーんか浸ってない?白矢くん」






美華の言う通り、白矢は日和との思い出に浸ってひとりの世界に入っていた。






「日和と一体何をしたのよ...。冬休みになって、日和の所に行ったら絶対聞いてやる」






「凛と白矢くんは日和大好き過ぎるんだね美華。美華?って、寝てるし....」





疲れが限界に達した美華は静かに眠りについた。紬は凛と白矢を最後まで観察して、冬休みが来るのを待つのでした。
文化祭が終わって冬本番が始まりました。こっちでは雪が降り積もっています。





12月が始まると、町はクリスマス一色。





今年のクリスマスは桐斗くん、木乃実ちゃんとクリスマスパーティをしました。






私は白矢くんとも過ごしたかったな。文化祭だけじゃ足りないよ。






文化祭の出来事から私は白矢くんのことが頭から離れません。たまに我に返ると恥ずかしいです///






でも今日は、そんな気持ちは晴れると思います。






「くっしゅん!駅のホームは結構寒いな」






冷えた手にはぁーと息を吹き当てて温める日和は1人で駅のホームに立っていた。






本日、12月31日は大晦日。1年が終わる節目の日。







大晦日は大抵の人は家でコタツに入りながらのんびりする人が多いだろう。






けど、日和にとってはのんびりしていられない日である。






それは何故かと言うと...。





「「「日和ー!」」」





「来た!おーい」





着いた電車から降りてきたのは日和の仲良しの友だちの美華、紬、凛。





そして、日和の彼氏の白矢。
「みかっち、つーちゃん、りーちゃん。久しぶり!」






「リアルの日和だー!可愛いー。もう離したくない....!」







1番最初に日和に抱きついたのは凛。








白矢から文化祭の話を聞いてからこの瞬間を誰よりも待っていた。







「凛、日和が潰れる...!」






美華の注意に聞く耳を持たず、体いっぱいに日和を抱きしめ続ける凛。






「りーちゃんそろそろ息が....」






「凛!日和が本当にやばい!」






紬の声に気づいて凛はすぐに日和を離した。






「うわぁ!日和ごめん!大丈夫?」






「大丈夫だいじょうぶ....」






久しぶりのりーちゃんのハグ。中々の力強さでした。









りーちゃんの会えて嬉しい気持ちはちゃんと伝わってるよ!







「日和」







「白矢くん。会えて嬉しいよ!」








「俺もだ。日和ちょっと髪伸びた?」







「うん。今伸ばしてるんだ」






ちょっと変化に気づいてくれる白矢くん。








会えなくて寂しかった気持ちが一気に吹き飛んだよ。
「リア充め。大晦日の昼間からイチャつきやがって...!」







「つーちゃんそんなんじゃないよ...!」





確かに白矢くんと会えて3人のこと忘れてた。でも、ちょっとだからね?





「羨ましいな。そうだ日和、白矢くんから名前で呼ばれているの気づかなかったんだって?」







「え?」







本当に気づいてなかった日和。目が点になって、首を傾げた。






白矢くんが私の名前を?あれ?そういえば、『中原』から、『日和』になっていたような...。






「本当に気づいてなかったんだ。だって、白矢くん」








ショックを受けてその場で倒れそうになった白矢。日和は慌てて白矢に全力で謝罪した。








「は、白矢くんごめんね!気づかなくて。私、名前で呼ばれるのが普通だったから....。本当にごめんなさい!」








「い、いいんだ。日和にとって、普通なことをした俺が悪い。そうだよな。あの幼なじみだって名前で呼んでいたな」








「過去最高にイケメンが崩れたね。日和恐るべし!」






白矢くんのこと傷つけちゃった。鈍感なのは私の悪い癖。いい加減直さないと。






「みかっち楽しんでるしょ!もう」







「ねぇ、そろそろ行かない?夕飯の材料買いに行くんでしょ?」








「つーちゃん。そうだね。今日は家にたくさんの人が集まるから早めに準備しないと」







つーちゃんが間に入ってくれて助かった。このままだと、ずっと引きずることになっていたもんね。って、私が悪いんだけど...。







少し小走りで駅の出入り口に向かった日和。置いていかれた白矢は気が重く、思うように足が動かない。








「そこの崩れたイケメーン。早くしないと置いていかれるよ?」







「川口。あまり俺にそれ以上言わないでくれ...」
駅を出て、まずは日和の家に荷物を置きに行った。






今回は2泊することになっている。泊まる家は、美華たち3人は日和の家。







白矢も日和の家に泊まる予定ではあったが、白矢は恋人である日和の家に泊まるのは早いと感じ、日和の友人である桐斗に頼んで、泊めてもらうことにした。






「白矢くんはまだ日和の家に泊まる勇気はなかったか」






それは当然、美華たちも気づいていた。







日和と白矢をひとつ屋根の下で過ごさせるのは友人としてまずいと思っていたが、何かある方が面白いと考えていたのは美華たちとって美味しい話でもある。








「それはそうだよ美華。おばさんはともかく、おじさんがいるからね」








「紬の言う通り。挨拶なしで、自分の娘の彼氏を泊めるなんて言ったらおじさんショックで寝込んじゃうもん」






パパにはまだ彼氏がいることを言ってないんだよね。ママには一様話してはいる。







凄く会いたがっていたけど、今日はおばぁちゃんの家に行ってるから、また今度かな。そういえば最近、おばぁちゃん調子悪そうだった。







夜に1度、連絡してみようかな。







「日和。今日は何を買うの?」






「美華は食べることばかり考えてるんだから」





そういった矢先、凛のお腹もなり始める。





「凛だってお腹空いてるじゃん」





「しょうがないでしょ!?夕飯楽しみで、お昼少なめにしてきたんだから」







「じゃあ今夜は沢山食べれるね。今日の夕飯はお鍋だよ!」






皆と食べるならやっぱり、沢山食べられるお鍋だよね。






「やったー!さすが日和。私の天使...!」







また興奮して抱きつく凛。日和は足に力を入れて頑張って耐えている。