「だから、デートしませんか?」
優大くんが私に手を伸ばした。


いいのかな?

本当に大丈夫?



でも、私は。

優大くんの手を取った。











少し秋らしくなり、半袖では肌寒くなってきた頃。

夜の「黒猫」に見慣れないお客様がやって来た。

社会人カップル。

デートのおしまいに寄ってくれた感じ。


男性が女性の手を握り、
「オレとの結婚、考えてくれる?」
とプロポーズをしていた。



その言葉を偶然耳にしてしまった私と幸絵さんは、その日の仕事帰りにふたりでキャーキャー騒いでしまった。


「爽やかなカップルだったよね」
幸絵さんが嬉しそう。

「幸せになってほしいですよねー」

「でも彼女のほう、何か考えてたよ?プロポーズされて少ししたあと。何かあるのかな?」
幸絵さんが不敵な笑みを見せる。


「もー、幸絵さん!怖いから!」
私は軽く幸絵さんの肩を小突いて、
「でも、幸せになってほしいですよね」
と言った。