あれから数日が経って。
今日も私は「黒猫」で働いている。
「今日ってさー、誰かさんの誕生日だって、深雪ちゃんは知ってるの?」
薫おじさんがテーブルのセッティングをしながら、恐る恐るといった感じで話しかけてきた。
「誰かさん?」
私はぼんやりと薫おじさんを見た。
「んも〜ぅ!武岡さんに決まってるじゃん!見てないの?インターネット!情報!」
「……誕生日」
優大くん、今日誕生日なんだ?
32歳になったんだ?
ぼんやりした頭の中で、思い出した。
優大くんが会いに来てくれた、私の誕生日のこと。
「……深雪ちゃん、今日はもう帰って」
薫おじさんがイライラしたような声を出した。
「えっ、ごめんなさい。ちゃんと働きますから」
「そうじゃなくて!」
?
「ずっとそんな調子じゃない?魂が抜けましたーみたいな?オレはね、深雪ちゃん。無理矢理元気出されることも、作った笑顔も嫌いなわけ」