「……深雪さん」
優大くんの声。
「話があるから、オレに時間ちょうだい」

「あの、私……仕事が」

優大くんの顔を見ずに返事する。



その時、
「休憩あげるよ?深雪ちゃん」
カウンターから薫おじさんが言った。

「え、でも」
私、今は優大くんとふたりになるのは……。


「ちゃんと話し合うことは大事。ずっと元気ないままお店に立たれても、ねぇ?」
薫おじさんが田谷さんに同意を求める。

「あ、うん、うん。行ってきなよ!深雪ちゃん!何があったのかは知らないけれど」
田谷さんが慌てて返事して、私の背中をポンッと押した。
「頑張ってきて!」






みんなに送り出されて。

私は優大くんと、私の部屋まで帰って来た。
ひと言も話さずに。



玄関のドアを開けて、部屋に入ると。


「深雪さん」
と優大くんが口を開いた。


「どうしたんですか?なんで、電話もメッセージも……」
玄関に立ったまま、優大くんは悲しそうな顔をしている。


「あの、上がってください。お茶でもいれます」
泣きそうになりながら、私はキッチンへ逃げた。


優大くんが部屋に上がる気配があって。
私のそばまでやって来た。