『弟の蒼大はすごく優しい奴で、すごく泣き虫でした』
優大くんは言った。
『学校でいじめられてた子を庇ったことで、今度は蒼大がいじめられて。でもあいつ、ひとりで抱えこんで。オレ、あいつのつらい時に、そばに居なくて……』
弟さんがいじめを受けていた時に、優大くんは上京していて、「シー・ファンキーズ」を結成した頃だったらしい。
弟さんのことも。
ファンの女の子のことも。
優大くんの心の中に、深く深く、刻まれている。
『オレは何もしてあげられなかったんです』
優大くんを抱きしめて背中をさすりながら、私は思った。
優大くんの悲しみを。
後悔の気持ちを。
少しでもいいから、受け止めたい。
半分でもいいから、一緒に背負いたい。
だけど。
そんな簡単なことではないことも、分かっている。
ただ、優大くんの気持ちが落ち着くことを祈りながら、抱きしめることしか出来なかった。