「でもまさか、深雪ちゃんが恋人になるとは思ってもみなかった」


「そうですね」
私だって時々夢なんじゃないかと思う。


「ちゃんと考えているの?」
少しだけ薫おじさんの声色が変わる。
「芸能人と付き合うことの大変さ」

「え?」


「ファンの人や、周りの人だって、良い顔しない人もいるかも。恨まれたり、批判されたり。深雪ちゃんが傷つくことだってきっとあるよ」


「……考えたことなかったです」


「深雪ちゃん、引き返すなら傷が浅い内にね」

それだけ言うと薫おじさんは、
「帰ろうか」
と、店の鍵を取り出した。











夜。

ひとり暮らしの部屋。

お風呂から上がって冷たいお水を飲みながら、窓から見える夜空を見上げた。



優大くんのことを考える。

……今頃ランニングしているのかな?


いつも体のメンテナンスをしている優大くん。
健康的だし、細いけれど筋肉もある。