「お先に失礼しまーす」
幸絵さんが店から出て行く。
私もそろそろ帰ろうと思っていたら。
「武岡さんとはどうなの?」
と薫おじさんが聞いてきた。
「あ……、うん。仲良くしてもらってます」
改めて聞かれると、少し照れる。
「深雪ちゃんは知ってるの?」
「何をですか?」
「……その、武岡さんって、芸能人でしょう?」
!!!
「えっ!?薫おじさん、なんで?」
優大くんが話したのかな?
それとも薫おじさんが気づいたのかな?
「その反応を見ると、知っているってことでいいんだよね?」
「……」
黙ったまま、小さく頷いた。
「オレ、武岡さんが初めてお店に来た時、分かったんだよね。優大じゃん!って」
「すごい……」
「でもみんな気づかないし。じゃあ、知らないフリしようって」
薫おじさんはため息をついた。