「深雪さん、丁寧じゃないですか」

「えっ、そうですか?」

優大くんは玉ねぎをみじん切りし終わった。


「オレ、深雪さんの部屋が好きですよ。丁寧に生活してる感じがして、落ち着きます」


「そうですか?それなら良かったです」


「……最初に会った時のことをまだ覚えているんですけど、深雪さん、オレのことボックス席に案内してくれたんです。窓際で、でも出入り口の扉がよく見える席」


「そう、でしたね。よく覚えてくれていますね?」
実は私もよく覚えていたけれど、少しとぼけてしまった。

優大くんとの出会いを忘れるわけがない。


でもそう思っていることを知られると、ちょっと恥ずかしいから。


「あれは一瞬の判断だったんだろうけれど、多分、オレが店内を見回したから、待ち合わせしてるって思ったんじゃないですか?」

「……」

その通りです。

そう心の中だけで答えた。

「嬉しかったんです。丁寧に接客をしてもらえて。窓から外の景色も見えるし。扉から入ってくる人にもそれなりに用心出来る席だったし」

騒がれたりしたらすぐに出て行こうと思っていたから、と少し寂しそうに言った優大くんを見て、私は胸が苦しくなった。