商店街の中にある本屋さんに行く。
お目当ての小説はすぐに見つけることが出来た。
まだ見て回りたくて、なんとなく店内をブラブラ歩く。
写真集のコーナーで「店員お薦め!」というポップが立っていたのは、空の写真集だった。
それを手に取り、しばらく眺める。
写真集の中に、朱色に染まった雲がなんとも美しい写真があった。
私はその夕焼け空を見て、優大くんを思い出した。
優大くんの瞳。
どこか寂しくて、物哀しくて。
だけど深い優しさにあふれた瞳。
優大くんの瞳は、この空だ。
そう思ったら、小説と一緒に写真集も買ってしまっていた。
本屋さんから出てきたら、無性に優大くんに会いたくなった。
優大くんは、仕事なんだから。
それに私がもっと事前に誕生日だって伝えなかったから。
「仕方ないよね」
残念な気持ちを抱えたまま、私は部屋までひとり帰った。